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観劇日記と役者ごと・お手伝いごとまとめ

2019/12/28-29 年末企画「あなたの名前を呼んだ日」年の瀬に感じたいろんなことを書いてみる

大変にご無沙汰していますが黒田七瀬です。

気づけば年の瀬、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年は長いなあと思っていたのも束の間、過ぎてみるとマジで一瞬だった2019年。

最後の最後に観劇してきました。

あなたの名前を呼んだ日」。

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分かってた。どうせまた私は泣くんでしょって、予約した時点でとっくに分かってたし実際泣いた。

 

そんなわけで、いつもの箇条書きスタイルで感想と言うか、言いたいことをババっと書き連ねていこうと思います。個人の見解なのはもちろんですが、例によって気持ち任せに書いているので、空想家の妄想とでも思っていただけますと安心です(私が)。

 

  • 当日パンフレットやフライヤーに、作品のコンセプト的な文章が載っているじゃないですか。今回の作品にももちろんあったわけですが、そのなかで呼ばれてる名前って3文字なんですよね。『◯◯◯』って書かれているアレです。でも娘ちゃんの名前って漢字でもひらがなでも2文字。さらに言えば、この作品で公式に3文字表記されているのって3人だけで…ってことは名前を呼んでたのはお母さんで、呼ばれていたのはあかりさんとひかりさん…?じゃああの文章はお母さんからお二人への言葉なのでは…?!親から子へ、子から親へってそっか…そっかそっか…観たらやっとしっくりくるやつ…うわあ…!
  • …ということに気づいたので、私の中でもうひとり主人公を決めるのであればお母さんことほのかさんなのかな、と思っています。あかりさんが病院で感情的になるシーンでも、全員が視線を落とすか前を向いているなか、ひとりだけじっとあかりさんを見つめてたのね。何を考えているんだろう、どんな姿を娘に見ているのだろうと考えると悲しくてつらくて、いたたまれなさを感じてしまいました。いたたまれない…見ていられない…?うまい言葉が出てこないけど。お話の中で「やっぱり父親がいた方が良かったんですかね」みたいな台詞があって、ほのかさんとしては少なからず気にしていたんだろうなと。でも自分が子どもたちを守らなきゃって奮い立たせて、必死に女手ひとつで育て上げた強さに胸を打たれました。結婚式でお手紙を読むシーンはずるい。なんかもうずるい。私も地元を出てひとり上京した身なので、もういろいろと、本当にいろいろと考えて涙が止まりませんでした。ぐぬぬ
  • でも極論を言ってしまうと、そんなの子どもには関係ないのです。知らんけど、です。
  • 子どもは無邪気で無知で残酷だし、意外と周りのことを見ている。それはあかりさんも同じだったんじゃないかなあ。家が早く出たかったのもあるだろうけど、家族に憧れてたのもあったんだと思うのです。お父さんがどうとかお母さんがどうとか、そんなの覚えてないじゃん。知らないなら憧れちゃうじゃん。だからこそ子どもを愛せないことに自己嫌悪を覚えるし、その対象物である子どもがストレスの吐口になってしまったんじゃないかな、という当たり障りのない結論です。古川さんのお芝居、本当に良かったなあ…。2回とも後ろのほうから観ていたのもあって、細かいところまでは見れていないかもだけど。理想よりもずっと苦しくて大変で、自分なりの完璧を求めてがんばったらどんどん辛くて…経験はないけど想像は出来るので、とても不甲斐ないのに悲しいのに憤りと憂鬱に支配されるごちゃ混ぜの何かが気持ち悪くてしんどくて、最後にようやく向き合えて良かったねという気持ち。お話の最後ではカケルさんと子どもと、そして新たな子と一緒に幸せに暮らしている風景が見られて良かったです。最初と最後の一幕の表情が対照的で、素直に「良かったなあ」と思えました。幸せでいて欲しい。
  • そんな母と娘を見守ってたひかりさん。幼い頃から母と小さい妹とで暮らしてきて、お父さんのことも当然知っているから、たくさん葛藤を抱きつつも母親を助けようと動いてこられた方なんじゃないかな。だからこう、あの、こう言っちゃなんなんですけど、たぶん独身のままでいそうな気がする。とても大人だし、なんなら「早く大人にならなきゃいけなかった」方なんじゃないかと思うのです。これで実はニートでしたって言われたらoh…って感じだけど、きっと精神的に大人になったのは早いんじゃないかと思ってます。感情的になったあかりさんの言動には当然指摘するけど、嫌いだからとかじゃなくて、もうひとりの母親だからっていう部分が少なからずひかりさん自身にもあったからなのかな?
  • カケル氏…いい奴なんだろうけど頼りないよう…!とは言えど、夢に向かって生きているなら仕方ないと思うし、そもそも男性は子どもが生まれてから父親になるという言葉も聞きます。とくに、ご自身が男手ひとつで育ててもらったからこそ、結婚後や子どもを育てることに向けて、いろんな不安に苛まれながらも必死に前を向こうとしていたんだろうなと。意図しないタイミングでギアチェンジしなくちゃいけなくて、いきなり父親だなんて言われても…って困惑する暇もなく、家族のために働くぞ!っていう選択をできたのはカケルさんの強さなのでは。あかりさんと子どもたちともども、幸せに前を向いて欲しいと願いました。
  • 中田と透の劇団コンビ。中田とカケルさんの関係性、いいですよね。信じ合ってるからこそお互いを褒めるし意見も言えるし、っていう。バイトしつつも自分の目標に向かって生きてる、でも心のどこかでいわゆる「ふつうの生活」みたいなのに小さな憧れはある、っていう感じなのだろうか。芝居が好きだと思っていた相手から当然芝居を辞める決意を聞かされたとき、どんなふうに景色が変わったんだろうなあ。中田のタイプならだいぶ変わってしまいそうだけど、案外なにも変わってないのかな。とりあえず蛍さんには素直にアタックしてくれー!と思ってはいたけど、上手くいかないでくれたほうが面白い気がします( ˘ω˘ )スマ婚うんぬんのくだりのときの透はすっっっっごく嫌いになった(ド正論ではある)けど、その時点で演劇を離れたカケルや劇団のために必死に頑張ろうとしていたからこそ、自分に余裕がなかったんじゃないか説が私の中で立証されています。なんとかできないかと考えた結果のビデオ出演(?)と、間違ったタイミングでの到着が面白かったです。これからもどうか良い関係性を築いていってほしい…!
  • 店長こと工藤さんと七海さん、これはハッピーエンドなの…?結局終わりにできなかったわけで、何度も別れようと思っても別れられなくて、また同じように会って…っていうのをたぶん複数回繰り返してるんだよね?ひと口にハッピーだとは言えない気がしてなりません。そもそもハッピーって何?私たちには私たちの愛が、って言われても…ねえ…ってなります。ある意味あかりさん夫婦との比較対象だなあ、と。感情的になってつらさを味わいつつも前に進む決意をしたあかりさんと、穏やかに愛を育むけど現状維持のままで、そこからはもう前に進めないであろう七海さん。形は違えどもそれぞれの幸せがあって、っていう感じで終わってはいたけど、遠くない未来に七海さんとあかりさんは決別してしまう気がする…。食べちゃいたい、食べちゃう!の七海さんはとても可愛らしくて好きです。
  • ◎ラブラブファンタジー☆なお二方。個性が強すぎて最初はぶっちゃけ目を疑いました。須藤さんと志穂さん……え…?っていう(´・ω・`)ご挨拶させていただいたとき、間近でお顔を見たら目がバッッチバチでした。目ヂカラ!!!ときどき垣間見られるバンギャさん感と話し方と見た目のギャップがすごかったですが、たぶん良い子なんだろうなと思いました。言うまでもなく、ものすごく芯は強そう。そのぶん子どもにはまっすぐぶつかって行きそうな気はする。
  • 龍星さんこと佐藤さん、あまりにパンチありすぎて始終笑いが止まらず。あそこまでバチっと人格変わるのはすごいなあ…プロのアーティストさんだもんなあ…!そういう環境に身を置いているからこそ、どんな自分もまっすぐ愛してくれる萌さんが大好きなのかも。ぶっ飛んでるけど案外普通の人だし、たぶん良い人。言葉のチョイスの独特なセンスも面白かったなー。ジャスティスのジャスティス感のなさにびっくりした(´⊙ω⊙`)おふたりとも出ハケのときの動きも超特徴的で面白くて、とくに龍星さんがピョコピョコ動いてるのがとんでもねえ面白かったです。お二人とも細かいリアクションをずっっと取ってるんですよ。うんうん頷いてみたり、萌さんが龍星さんにもたれかかっていたり、イチャついてたり。見ているだけで楽しい気持ちになるお二人でした。萌さんの言っていた「ステージで輝いている彼が好き」っていう台詞は、実はかなり真理なのではないかと私は思ってます。自分自身に対しても同じく。※当日パンフレットには龍星って表記されてたのですが、気づかないまま誤って「流星」でツイートしてしまいました…すみません( ;  ; )
  • カケルさんの父親である芳雄さん。不器用な方に見えるけど、秘めてる包容力がすごい。ほのかさんと同じく、ひとりで子どもを育て上げた方。母と娘、父と息子ってそれぞれ1対1の空気感が違う。母と女はずっと仲が良いケースも少なくないそうですが、息子は父を超えたいと思う方が多いのだとか。母の背中と父の背中、どちらも頼れるけれどそれぞれで与える影響や見え方も違うよね。もちろん憧れの抱き方も。芳雄さんはとにかく「俺についてこい」感がすごい。誰かがついてくることで強さを発揮できるというか、誰かのために頑張れる方というか。そのいちばんの要因はやはり息子さんで、きちんと正面から向き合ったうえで引っ張るし支える、そんな方なのかしらと思いを馳せています。どのシーンの印象も強いのですが、「自慢の息子です。自慢の嫁と、自慢の孫ができました。」っていう短いスピーチが好きでした。
  • 蛍さん、素敵だったなあ…凛としていたなあ…。ご自身の持つ事情について語っているのを聞いているとき、じわりじわりと心が浸食されていって、気づいたら泣いてました。受け入れるまでにどれだけ時間がかかったんだろう。子どもが大好きで、そのうえで今の仕事を選ぶには、どれだけの強さが必要なんだろう。本当に他の人の幸せを願わなければ、あるいは仕事をきちんと全うしようと思えなければ、どこかでつらくなってしまう気がする。そのうえで、蛍さんは一度もあかりさんを責めていない。看護師さんなんだから当然だって思う方といるかもだけど、話すのも躊躇われるようなご自身のお話をあかりにしている時点で、感情的になってもおかしくないと思うのです。それでも怒らないし責めない。冷めているというよりも受け入れている。逃げてるわけでもない。演出かどうかは分からないけど、前半は台本に視線を落としている姿勢が多く、前を見ることがほぼないのがどうしても引っかかってる…。その姿から明るい印象は受けないし、でも話し方は穏やかな明るさだし、なんでかな?って考えてます。いまのところ、内面の暗いところを演出されてるのかなーと思ってたりする。幸せになって欲しい。
  • 照明がパッと消えるとこがあって、なんだか亀裂が入ったみたいに見えるなあと感じていたら、それから少しずつあかりさんの心が不安定になっていって、おお…あれわざとだったの…!?って思いました。実際のところどうなんだろう…どっちにしても結果オーライなんだけど!ね!!
  • 実際にどこかで今この時間にも起きている出来事かもしれないし、いつかの私にも起きうる出来事だと思う。どうあがいても結局は他人だから、良かれと思ったことが相手にとっては今必要ないことだったり、申し訳ないと思っていることがじつは大したことじゃなかったり。そういう小さな価値観の違いを埋めていかないと、誰にでも起きる可能性はもちろんある。周りの環境による部分ももちろんある。このお話での救いは、カケルがあかりのことをすごく好きだと思っていることじゃないのかな?ひとりじゃないって気づかせてあげるのはやっぱり必要だよねって思いました。自分はひとりだと思ってしまう優しい方ならなおさらに。

 

何よりもいちばん感じたのは、熱量のある作品って本当に面白いなってことです。基本だとは思うんだけど、こう、肌に伝わるものって言う?やつ?

じつは今年、家族について今まで以上に考えるようになったきっかけがいくつかあって。それを踏まえたうえで、家族について考える自分を許せるようになりました。だからこそ今まで見えなかったことが見えるようになった経緯があるので、余計に心に響くものがあったんだと思います。

藤丸さんの作品を見るたびに死にたくなってた私ですが、死にたいとは思わなくなったし、むしろ前向きに絶望してる感じがあります。うまい言葉が見つからないけど、いつだって意味のあるものに結果なっているからすごいなと思ってます。年の瀬というタイミングも相まって本当にいろんなことを考えさせられる作品でした。そんなわけで、心も身体もなんとなく、ちょうどいい倦怠感に包まれております( ˘ω˘ )

それにしても、今回もダラダラと長く書いてしまったな…うむむ…

 

観に行けて良かった。

ありがとうございました。