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観劇日記と役者ごと・お手伝いごとまとめ

2023/06/28〜7/2 -ヨドミ- 第五回公演『三日月には程遠い』について

黒田七瀬です。

6月28日〜7月2日に下落合TACCS1179にて、-ヨドミ-第五回公演『三日月には程遠い』当日運営として入らせて頂きました。ご来場頂きました皆様、まことにありがとうございました。

約1ヶ月経ってしまいましたが、改めての振り返りブログをこっそりと。


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気づけば当日運営での参加も四度目になりまして、相変わらず-ヨドミ-の劇団員の皆様と客演の皆様の魅力というか人間力というか役者力というか、に、圧倒されています。それはきっと舞台をご覧になる皆様には大いにご理解いただけるのではと思います。そうであってほしいなという願いもありつつ。

理解とは。理解することができれば争いは起こらないんだろうか。理解はできなくても理解できないことを理解して歩み寄るとか適切に距離を取るとかそういうことはできないんだろうか。

日常は小さな戦争の繰り返しで、それがしっかり表面化すると命を失うほどの大きなものになっていって、それが当たり前になっていくのかなとか思います。

以下箇条書き。

  • ハマツタカシさん演じるチノ、めちゃくちゃかっこよくないですか?役どころとしては愛国心が強い秘密警察官で、主人公のベレッタたちレジスタンスから見ると分かりやすく敵の立ち位置なわけですけど、必ずしも全てを嫌いになれるかと言うとそうではなくて。当たり前は当たり前であって、それに違和感を覚える瞬間はあったとしてもやっぱり当たり前のことであって、それを生まれ持っての感覚として育てられていて、と考えると大体みんなそうじゃない?と思わざるを得ない。正しさと正しさのぶつかり合い。正義の反対は別の正義であって、見る人が見ればチノ自身は善人でもある。実際のところどうなんでしょ。いろいろ考えてみるけど結局のところ「これがナショナリズムだ」の台詞に集約されている。大きな世界のなかのひとつの存在の、個々の持つ価値観が国に準じているかどうか。個性や意見が必要なく、民意を自分の意見と言えるのは、ある意味でとても人間らしいことなのかもしれない。
  • イチ、とても可愛い。とにかく可愛い。西出結ちゃんのお芝居って本当に唯一無二だし持っている雰囲気もまた同じくなので、いつ見てもニコニコしてしまうし、絶望してしまうし、胸が締め付けられてしまうし、いろんな感情を与えてくれるので見ていてとても楽しいです。いま私は生きてるんだなあって感じてしまいます。素敵だった。
  • 同じ1月29日生まれ、同じ鹿児島出身、の黒須みらいさん。優しいお姉さんだわとホワホワしていたのですが、作中でもお姉さん的な立ち位置。絶望した場面のお芝居が美しかった。3人のなかでミィがいちばん野心的で自分の思い描く未来に向かっているし、おそらく本人も自覚していたんじゃないかなって思うのです。意志の強さは必ずしも幸せにつながるわけではなくて、正しく運良く噛み合ったときにたどり着けるものなんだなと思いました。もしお付き合いしていなければ?違う人だったら?ベレッタの電話をうっかり聞かなければ?それを密告しなければ?いろんなところに幸せになるルートはあったけど、それはミィの幸せではなくて、だからこそあの終わり方を迎えたわけで。ちゃんと自分で選んだ結末だからこそ余計に、かなしい。可哀想ではない。
  • 冨沢さん演じるフムス、とても不愉快でとても面白かったです。ベレッタの前で「父さん」って笑顔で呼ぶの、めちゃくちゃ好きです。怜悧冷徹。たまに癇癪とか起こしてほしい願望がありまして、おそらく脳内で迅速に完結させてしまうんだろうな。すごいな。使えるものは全部使うの姿勢、あの世界で正しさを追うのであれば実はいちばん正しいのかもしれないなあ。
  • 私はパームに幸せになってほしかった たぶんそこにはベレッタもミィもいたはずなんだ ミィの幸せはふたりともいないかもしれないし、ベレッタの幸せはローズしかいなかったかもしれないけどさ、たぶんパームはそうじゃなかったと思うんだ っていう勝手な願望です
  • カカシはヒロインだよと周りの方に言われていて、その声を聞いたうえで観たゲネプロでしたが「これはとてもヒロイン」と思いました。面白いなあ。あの言い回しと雰囲気は恵太郎さんだからこそのものだと改めて。一言一句、一挙一動、その人が面白い。人。
  • ラストシーンの三日月、すごく綺麗だったなあ。ベレッタは救われたかな。救われるかなあ。夜が明ける日がきたらいいなあ。手が届くかな。手を伸ばすことをやめないでひたすら生きるってのは難しすぎるから、その先あるいは隣に一緒にいてくれる存在を大切に生きてほしい。なっちさんはやっぱりかっこよかった。
  • 最後のローズ、悪い意味で人間味があってよかった。ハンカチのシーンはウワッとしました。ほんの少しの動作で時間の流れが見えた気がして、本当にウワッとしました。当たり前が当たり前になったとき、その前の当たり前は全然違うものになるんだっていう遣る瀬なさ。
  • 壁が!ない!なくなった!おお!!!と心の中でささやかに拍手していました。面白かった。

ちょっと消化不良感はございますが今回はこのあたりで。本当にのんびり書いたので内容がフワッフワですが、こういう誰かがいつかのどこかにきっといたんだろうなと少しだけ思いを馳せつつ。本当に程遠いなあ。〆