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観劇日記と役者ごと・お手伝いごとまとめ

‪2020/2/20-24@八幡山ワーサルシアター -ヨドミカケ- 企画公演「愛しい皃のトートロジー」を観ました‬

黒田七瀬です。

ちょっとバタバタしていたのもあって、ゆっくりブログを書けずじまいでもう2月。時の流れは早いものです。気づけば置いていかれるような気がするけど、それでもたしかに自分の時間を刻んでいて、わずかながらも前に進めている。

そんな感じだったらいいな!!!

………さて、先日-ヨドミカケ-さんの企画公演「愛しい皃のトートロジー」を観劇して参りました。

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かつて集団asif~さんで公演された作品を-ヨドミ-としてやろう!という試みで決まった企画公演とのこと。ゆえにその期間、-ヨドミ-さんは-ヨドミカケ-になるんですって。ツイッターアイコンも期間限定で極彩色からモノクロに。

トートロジー自体は、asifさんが公演したものをDVDで拝見したことがあったので、お話の内容はすでに知っている状態。私にとってははじめて見たasifさんの長編作品です(私がasifさんの公演を生で観られたのは最後の2回だけなのです)。

そんなわけで、感想などつらつらと。

  • ようやくご挨拶できた山本恵太郎さん。踏切のサーカスでも思ったのですが、なんというか、水のような方だなと思います。寧々と麻友の影に隠れてはいますが、義之もだいぶしんどいことになってるじゃないですか。自分が手をくだしたせいで寧々はあんなことになるし、大事な親友にもつらく当たらなくちゃいけなくて、でもいちばん愛してる人は何をしても振り向いてくれなくて。ここまでくるとそれは果たして愛なのか?と思ってしまう。愛故に愛されたいのか、自分のしたことを認めてほしくて愛されたいのか。「がんばる」っていうのは考えようによっては執着しているとも言えると思うので、義之の愛はもはや執着なんじゃないかな、そこに縋ってしまうのかな、とか考えてました。山本さんの背格好だけで言えば、全体の中でも背が高い方だったので頼りなくは見えないはずなのですが、美香の前にいる義之は取り立て屋さんになっても弱々しい。すごく頼りない。…っていう一連のぐちゃぐちゃを軽々と飄々とやっているみたいに見える山本さんは、すごく美しいなと思います。きれいとかかわいいとかかっこいいとか、そういうのじゃなくて。美しかったです。底知れぬなにか。また拝見できて良かった。
  • トートロジーをやる!っていうのを知って最初に思ったのが「たぶんハマツさんが剛なんだろうなあ」でした。案の定剛はハマツさん!知ってた!!立体的な舞台セットにも関わらず、軽々と跳ね飛びながらお芝居されている姿はさすがだなと思いました。部活のシーンの間もひとり黙々と腕立て伏せしてて、シュールで笑ってしまいました。ハマツさんの素敵なところって、そこにいるだけでなんとなく目を引くのもそうなんですが、面白いことを狙ってやってる感がマジで1ミリも見えないところだと思っていて。それはセンスなのか、思い切りの良さなのか、経験値なのか、頭の良さなのか、あるいはその全部なのか。見てる側も純粋に楽しくいられる。相乗効果で他の人も映えるし、ご自身が真面目にしてるシーンのお芝居が映える。それもセルフプロデュースと言えるのではないかなーと、そんなことを考えております。そうそう、今回もセクシー担当でございました。美脚。
  • 前回の公演でコサカさんがしていた賢治は「なんだこのクズは!」って感じだったのですが(すみません)、今回尾崎さんがされてた賢治は「弱いなあ」って印象です。自分に原因があるからというか、周りに翻弄されてしまうお人好しっていう。最後まで見ても「かわいそうに」とは思ったけど、自業自得だなとはあんまり思わなかった。弱々しい。だからかもしれないけど、-ヨドミカケ-のトートロジーは「綺麗」っていう感想です。どちらも違ってどちらも良い。
  • 消えた娘、そして不倫成就ルート。私の記憶が確かなら、奥さんが樹姫ちゃんに言った台詞はほとんど同じだったと思うんだけど、言葉の意味がこうも変わるものかね。いずれにせよ、あれってけっこうやべーこと言ってる気がするのです。家族ってそりゃ良いかもしれないけど、アナタそれ自分で壊したからね!と思わなくもない。地下ドルに貢いでた旦那さんのおかげで苦労して、先生との不貞行為でなんとか心を繋いで、、良いのか悪いのか分からなくなりそうです。頑張るのをやめた人。頑張り続けようとする人。頑張るしかない人。頑張りたいけど弱い人。頑張らせてしまう人。いろいろ考えるとやるせない気持ちになります。しあわせってなんだろうね。
  • お友達さんもお医者さんがひとりになったことで、お友達さんの言葉のえぐみみたいなのがかなり薄まった感じがします。悪女感がなくて、純粋に友達を心配している方だなと思いました。作品全体の雰囲気が後味悪い感じじゃないのはたぶんこの方のおかげなのかな、と。こんのさんがされてたお友達、こわかったもん。ぞわぞわしたもん。悪意の塊みたいに見えたもん。熊野さんがされてた真美さんは最後まであたたかい方に見えたので、少し安堵しました。これが意図した結果なら超こわいけど…
  • おとなりさんちのパパン、可哀想だけど最後唐突にクズ感が増して少しびっくり。家族はいいものだと言う元奥さんと、子供ができなかったからお前らのことが嫌いだったと言い放つ元旦那さん。なんだか対照的に見えました。このあとストーカー化とかしそう。誰も幸せになれなそう。
  • がんばるのをやめた人、がんばろうと気を張る人、がんばろうよと背中を押す人。家族って言っても他人ではあるから、必ずしも価値観が同じってわけじゃない。似てはくるかもしれないけど。がんばるから、って言ってたのにそれを殴ることで発散するお父さん。いちばん近くにがんばってる人がいるのに、それを正当化してしまうお父さん。状況に酔ってるだけのお父さん。たぶん寧々ちゃんが昏睡状態のときも同じ感じだったんじゃないかなあと勘繰ってしまいます。パパン…。
  • 舞台セットがとても緻密。人と人とのすれ違いが影で表現されてるように見えて。めっちゃ寒気がした。すぐ近くにいるのに遠くて、遠くにいるのに近くて、っていう具合に。意図的かどうかは分からないけど、見てると切なくなりました。追いかけてるのに離れてしまう感じ。見入ってたので言語化しづらいけど、やっぱりすごいなあって思いました
  • やっぱり面白いです。本当に面白いです。生で観られてよかった。フライヤーのデザインもめっちゃ好きなのでお部屋に飾っている。

 

感想のとこにも書いたけど、すごく綺麗な作品でした。悲しい出来事を綴っているはずなのに、どうしてこうも綺麗で儚く見えるのかなー。誰か幸せになれた人っていたのかなー。そんなことを考えています。

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終わり方がよく分からなくなったので。

では、また。