ysg

観劇日記と役者ごと・お手伝いごとまとめ

アジーサークル「朗読短編集の調べ」についてのとても長い感想のようなもの

黒田七瀬です。RPGでのロールはたぶんジャマーです。じわじわ。

 

f:id:mikoxn:20190525131611j:image

5/17-19の3日間に行われた、ager circleの「短編朗読集のしらべ」についてようやく!書くぞ!!

もっと早く更新するつもりだったのに全然書けなくて、気づいたら6月です(´・ω・`)

さて

今回は受付と舞台との距離が近かったのもあって、ぜんぶの作品を聴いてたんですけど、ほんとに面白かったー!面白かったー!!せっかくなのでいつものごとく、作品の感想などなどを書き連ねていこうと思います。

 

★回(黄色)

1作品めは、松原さんと升さんの二人芝居。肉体と感情とが乖離してしまった奥さんと、小説家の旦那さんのお話。あの、まったく言葉を選ばずに書きますけど

いや~~~~~!!!!

升さん好き~~~!!!

「実はけっこう考えてます」「実は聞いています」「あの明治さんが運営してらっしゃる!?」とか、もう言葉が全部好き。かわいいなあと思ったのと同時に、きっと献身的で健気な人なんだろうなと感じました。松原さん演じる旦那さんの不器用な一生懸命さがまたせつない。

奥さんが必死に声を荒げても旦那さんにはひとつも届かないんですよ。だって心で思っても、体がそれを伝えてくれないんだもん。それが自分の意識下のなかで行われてて、まざまざとその光景を見せられてる奥さんの気持ちを想像すると…とても苦しいです。苦しいの。

奥さんが入院させてと叫んでいても、旦那さんは自宅療養で自分でなんとかしてみせるっていうすれ違いがもうね、どちらも悪意がなくて、どちらもまっすぐにお互いを思い合っているからこそ、やるせないというか苦しいというか。

聞いたところによると、最後のシーンは「旦那さんが鍋をかき混ぜてて、奥さんは心ここにあらずな状態」だったらしいんですよ。身体から少し離れた場所から奥さんは必死に、旦那さんに声を届けようとしてるのに届くはずもない、届ける術そのものを失ってしまった奥さん。

ぜひこの目で見たかったけど、たぶん苦しくなるだろうから見られなくてよかったのかもしれない。耳で作品を聞いているだけでもあんなにかなしくてやりきれないんだから、きっと目で見てしまったら私の涙腺は軽率に死んでしまう。


2作品めは、ネットゲームを介して出会った男女が、直接会うことになってしまったお話。騒々しい。宗三さん面白いね!!!私も普通の人と話すのは苦手な部類なので、宗三の言ってることとやってることにはわりと共感したりしなかったり。 

高木さんがゲームと現実とを行ったり来たりするシーンが大好きなんですけど、ゲネプロ含め目で見ることができなかったのは残念でした。゚(゚´ω`゚)゚。チャラかっこいーヲタク、面白いなと思います。

あとあと、独特の口調の野村さんと阿佐ヶ谷姉妹風のさちさんのキャラが濃すぎてこうなんというか、すさまじかった。言ってしまえば全員キャラ濃いんですけど、見てないのにお腹いっぱい感があったので、目の前で見ていたらきっと胃もたれしてたと思います(書きながら思い出しててもちょっとキてるけどすごく見たかった)。さちさんがしていた美輪明宏さんのモノマネが好きです。

ハーピーこと古川さんの「生えないぃィ(ウィスパー)」がすっごく好きで、何度もモノマネしている私です。「林ィ!」って言われたい人生でした。林になりたい。

最後のシーンの「自分に正直に生きるって、素晴らしいですね」の言葉が、あまりに純粋無垢に感じられて逆にこわかったです。

 夢子というか弘菜さんかわいい。


3作品め、野村さんと高木さんの二人芝居。唯一インプロがある作品!おもろい!ロミオとジュリエットのキャスト逆にしてみようぜのくだりがめちゃくちゃ好き。野村さんのコメディセンスが大爆発あそばせておりました。

その面白さがあったうえで将来の話になるわけですが、相変わらずの急降下。あっという間にシリアス。お芝居がやりたい、またはすでにしている方には見てほしい。

きっと同じような状況に置かれて、同じように決断する人はたくさんいると思うし、たぶん私もそうすると思う(今はまだしないよ)。会おうぜ、って言ってたけど、たぶん二度と会わないんだろうなあ…リアルで重いなあ…そんな感じで、いろんな思いや想像を頭に描きながら聞いてました。

 

●回(赤色)

f:id:mikoxn:20190601121044j:image

1作品めは東京に上京してきた青年と、地元の香川県に残った女性を軸に進むストーリー。どことなくバブリー、だけどセンチメンタルでノスタルジー。なんとなく横文字を並べてみましたがそんな感じ。

私も上京した組の人間なもので常日頃から思ってるんですけど、東京ってふしぎなところだなと。人を変えてしまう魅力というか、選択肢が腐るほどあるもんね。大学生で上京、ってなったらそりゃ浮かれちゃうよね。

千代ちゃんがお母さんと電話するシーンがいちばん嫌いでいちばん好き。目の前にちゃぶ台あったら太郎ちゃんめがけてひっくり返してやりたい。たぶん泣きそうだったと思うんだよ千代ちゃん。元気だったよ、っていう言葉がこんなに切なく聞こえたのははじめてです。太郎ちゃん許すまじ。木綿のハンカチーフの歌詞が要所要所で出てきて、なんとなく察してはいたけどね。

独断と偏見だけで言えば太郎ちゃんはたぶんもうサークル辞めるし大学辞めるし、でも地元には帰らず東京で生活するんだろうなあ。千代ちゃんとももう会わないんだろうなあ。

 

2作品め、朝原さんと古川さんの二人芝居。朝原さんのお芝居は何度か拝見していますが、やっぱり好きです。朝原さんはゆったりとした雰囲気をお持ちだなあーと勝手に思っていたのですが、瑞穂が思いのたけをぶつけてる姿はとても鋭利でビリビリしていて、思わず見入ってしまいました。ひとつひとつの言葉があまりにまっすぐで、でも古川さん演じる潤が言ってる言葉も理解できるから、寄る辺ない思いで胸がいっぱいでした。

直前に生着替えしてたりギャルごっこしてたのに、一気にドンガラガッシャーンまで落ちまくるのはさすがとしか。藤丸さんの作品を見るときはいつも「いま面白いシーンだけど、ここから一気に突き落とされるんですよねえ…」って少し構えたりするんだけど、効果を発揮したことは一度もありません。今回もそんな感じでした。ちくしょう。

最後の回想シーンだけ見れば純粋無垢できれいだと思ってたのに、すべてぶち壊すBGMの気持ち悪さが好きです。はじめて聞いたときはほんとに気持ち悪くなってしまって、うわあ…と思わずこぼしてしまいました。めっちゃ気持ち悪かった。

 

3作品め、春夏秋冬の兄妹とご両親が繰り広げるお話。

登場する人たち全員の個性が強すぎた作品でしたが、とくにトム↓ヤム↑↑クン↓さんが強烈すぎて、登場するたびに笑いを噛み殺していました。舞台での衣装をはじめて拝見したのは公演終了後だったのですが、音だけ聴いていたらどう考えても現地の方なんですよね。絶対タイのネイティブの方。そんな感じのカタコト会話だったはずなのに、千秋の部屋での流暢なやり取りが好きです。

さちさんのあたたかみ溢れる母親と、野村さんの芯の通った声に感じる父としての威厳?が、自由奔放な兄妹たちを引き立てているように感じました。

須藤さんこと夏雄のニート主張の勢いと潔さが面白かった。もっと見たかった。ふだんはとても丁寧でお優しい方というイメージがあるので、なおのこと面白かったです。

児玉さんは事故レベルに振り切ってて超面白かった。ご本人にも伝えた。お腹よじれた。別れるか?!

(全体的に箇条書きになってきた)

 

◆回(青色)

f:id:mikoxn:20190601121143j:image

この回は私にとってある意感慨深い回であり、いちばん楽しみにしていた回でした。というのも、集団as if〜さんが去年行った「アズイフ短編集」でも上演された作品なのです。私がアズイフの作品をはじめて見たのはこのアズイフ短編集のときで、藤丸さんの作品を見るんだ!という認識のもとで行ったのもこのときで、終演後に衝撃を受けたのを覚えています。だからこそとても感慨深かった。

ちなみにそのときに書いたエントリーはこれ→https://www.krdnns.work/entry/2018/08/01/223000


1作品めは、高橋研二さんと河原木志穂さんの二人芝居。この作品に関していちばん言いたいのは、とにかく美里さん怖い…!最初はとても幸せそうな日常の一場面でしかなかったのに、とある事象でそれが崩れて回復したように見えて、でもそれがどんどんグチャグチャになっていって…静かな狂気が積み重なっていくのが目に見えてこわかった。

しほさんの可愛らしさがかえって不気味に見えて、最後の例のセリフは一気に恐怖のどん底に突き落とされました。

 

つづいて2作品め。桃子さんこと松本さちさんのロングヘアがとても素敵…!明るくて優しい母親である桃子さんが、少しずつ変わっていくのが様は本当にくるしい。桃子さんが裕二くんを殴り殺すシーンは本当に鬼気迫るものがあって、心底絶望させられました。

旦那さんの世界で圧倒的に、唯一と言ってもいいほど色を持っていた桃子さん。だからこそ「そんなの病気みたいじゃないですか」「は?」のやりとりが最高に気持ち悪い。もうとっくに病気なんだよ気づいてあげてよと思ってしまうけど、自分の家族や大切な人たちがそうだとは認めたくないって人はたくさんいるだろうし、なにより研二さんのお芝居がとてもリアル。そんな旦那さんだからこそ桃子は病んでしまったんじゃないかと。そう考えると、冒頭の明るさや幸せそうな家族の風景が一気に狂った光景に見えてしまう不思議。

桃子さんにはどんなふうに見えていたんだろう。結果ばらばらになるのかなしい。一瞬でも幸せであったのかな。そうならいいなと。

あと、誰一人舞台からハケずに四隅に立っているのが気になりました。なんだろうな、みんなで同じ思い出を回顧しているってことなのかな。いや逆かな。同じ空間、同じ時間、同じものを体験していたはずなのに、歪んで見えてしまっていたっていうやつなのかな。お医者さんもしくは警察の方からすれば全員が等しくその場にいたわけで、でも実際に見えていたものだとか、旦那さんから見たら明るくてにぎやかな家庭だったとか、考えれば考えるほどにこじれてきますねコレ。

 
3作品め。嘘つきな男と入院している女の子の話。私がアズイフ短編集で見たのはこの作品だけ。そんなわけですごーーーく考えさせられた…はずなんだけど、記憶がないです。記憶にない、じゃなくて記憶がない。

好きだとかなんとかよりも懐かしさに引き込まれてすっ飛んだのかな。。役に立たない脳みそでかなしい気持ちでいっぱい:(´・ω・`):

はっきり思ったのは、役者さんでこんなに作品は色が変わるのか!と。荒々しくてワイルド感のある森谷さんじゃなくて、インテリ系で器用なイメージの森谷さんってのも面白かったし、とにかく物語が好きで好きで楽しさが爆発する純粋無垢な奈津ちゃんじゃなくて、天真爛漫で底抜けに明るい奈津も良いなって感じました。

 

今回はほぼ聴いてるだけだったので照明がどうとか動きがどうとかっていうとこまでは見れてないものもあるのですが、絶対的に沿ってるのは分かってるから全然…気になんてしてないんだからね!してないんだから!!(唐突なツンデレ)

音は相変わらず好きです…!心を急かされる性急な感じとか、底知れぬ恐怖を覚える感じとか。ピアノのインストはよく聴くのでもともと好きだったのもあるけど、藤丸さんの作品と出会って少し見る目?聴き方?印象?が変わってしまいました。上手く言えないけど。楽しいです。

 

こんな感じで

長々と書いてしまいましたが、総括すると本当に面白い公演でした!!まだ書き足りないくらいだけど止まらなくなっちゃいそうだからいったん落ち着く(ここまでですでに5000文字近く書いてる)。

当日制作としてお手伝いできて本当によかった!!最後になりますが、素敵な作品、素敵な役者さん、素敵なスタッフの皆様、ご来場いただきましたお客様、本当にありがとうございました!

 

黒田七瀬